北海道の旅
札幌ツアーと迷ったのですが、この間道北へ旅してきました。
「馬や牛の姿はどこにも見つからず、人間の家の影さえなかった。
あるものは、ただ灰色のどんより曇った空、とても夏の陽気などとは思えない、冷たい、霧雨をふくんだ風、荒い獣のたてがみのように乱れ渡った草、
私は遠いロシアの暖野へでも迷い入った旅人のような気がしてきた」。
・・・・これは作隊、藤森成吉の作品『旧先生』の中に書いてある、オホーツク海岸の描写です。
私は幌延や芦川のあたりを通る頃よくこの文章を思いだしましたが、このごろ草原の上を雲の影が過ぎる内陸に入ってみると、「ここはどこだ」と驚いてしまいます。
放牧牛の群れる草原がかくされていて、道端に「乳牛感謝の碑」などというのが目につきます。
かつてこの辺は大密林でしたが、この木材資源に目をつけた日本資本主義は、自分の意のままにここに鉄道を敷設。
アカエゾマツを天塩松と名付けて、楽器材として健り出し、しかもそのあとを故意か偶然か山火事が残りの森林を焼きつくしてしまいました。
もしも今、旅人がこの湿原に立ったら、立っている足のうらから冷たさが血の中にのぼってくるように感ずるのは、湿原の冷たさよりも、そうした隠された非道の歴史によるものかもしれません。
そしてそこにぼんやり立っている旅人などは、一片の紙切れのようですらあります。